広島地方裁判所 昭和44年(ワ)1295号 判決
原告 近藤商事株式会社
右代表者代表取締役 近藤荒樹
右訴訟代理人弁護士 飯田信一
被告 横山株式会社
右代表者代表取締役 横山直恵
右代理人支配人 横山義人
右訴訟代理人弁護士 宗政美三
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は、「被告は別紙目録記載の建物につき昭和四四年一一月一〇日広島法務局受付第四七二二三号をもってなした同年七月四日競落を原因とする所有権取得登記の抹消登記手続をせよ。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求原因として
「一、原告は別紙目録記載の建物外三筆の不動産につき昭和二九年七月三〇日広島法務局受付第一八二二九号をもって同年七月二九日訴外近藤宗南との抵当権設定契約による債権額金七五〇万円、弁済期昭和二九年九月三〇日、利息年一割五分、遅延損害金日歩八銭七厘の債権を担保する抵当権設定登記をなした。
二、しかるところ、右物件に対する次順位抵当権者訴外藤井金兵衛は、広島地方裁判所昭和四四年(ケ)第七〇号をもって本件建物外数筆の不動産について任意競売の申立をなし、同年四月二四日競売開始決定がなされ、同年七月三日の競売期日に被告が本件建物を競落し、翌四日競落許可決定がなされ、被告は本件建物について同年一一月二〇日同法務局受付第四七二二三号をもって同年七月四日の競落を原因とする所有権取得登記をなした。
三、ところが、右不動産の競売について利害関係人である原告に対し同裁判所から競売期日の通知がなされなかったため、原告は右競売期日に出頭することができなかった。従って右競落許可決定は競売法第三二条によって準用される民事訴訟法第六七二条第一号、同法第六八一条第二項により無効である。
四、本件競売は一括競売されず、土地家屋が個別に競落されているが、建物の最低競売価格の算定について法定地上権の評価がなされていない。建物のみの評価によって建物の最低競売価格としたため残りの土地は極めて低額に競売されざるを得ない。このような競売は最低競売価格を定めず従って最低競売価格の公告がなされなかったことに帰し無効である。
五、右のとおり本件競落許可決定は無効であり、従って被告の本件建物についての所有権取得登記も無効であるから、その抹消登記手続を求める。」
と述べ(た。)≪証拠関係省略≫
被告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、答弁として「請求原因第一、第二項の事実は認める。同第三、第四項の事実は否認する。
仮りに原告主張のとおり本件競売期日が原告に通知されず、また建物の最低競売価格の算定について法定地上権の評価がなされていなかったとしても、これらはいずれも競落許可決定に対する即時抗告により不服申立をなすべきものであり、競落許可決定が確定した以上競売手続の違法を理由に競落の無効を主張することはできない。」
と述べ(た。)≪証拠関係省略≫
理由
請求原因第一、第二項の事実は当事者間に争いがない。
≪証拠省略≫を総合すれば、本件不動産の競売について広島地方裁判所から原告に対し競売期日の通知がなされなかったので、原告は競売期日に出頭することができなかったことが認められ、他に右認定に反する証拠はない。
なお原告は本件建物の最低競売価格の算定について法定地上権の評価がなされていなかったため土地が極めて低額に競売された旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。
競売法第三二条により準用される民事訴訟法第六七二条、第六八一条は、競落許可決定に対する異議或いは抗告の規定であって、競落許可決定に対する異議或いは抗告がなされずに競落許可決定が確定し、競落代金が納入された以上は、右のとおり利害関係人に対し競売期日の通知がなされなかったとしても、かかる手続の瑕疵を理由に競落許可決定の効力を争うことは許されない。
よって原告の本訴請求は理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 岡田勝一郎)
〈以下省略〉